
2026年5月21日、神奈川県逗子市で開催された逗子海岸花火大会。ビーチの目の前の海上から打ち上がる約7,000発の花火を目当てに、毎年約10万人が集う一大イベントです。
混雑する場所でも快適な通信環境を届けるため、KDDIグループは、この花火大会の裏側で電波対策を行っています。
.jpg?width=840&quality=100)
現地に訪れる人は、花火を楽しむだけではありません。スマートフォンで撮影した写真や動画を共有したり、SNSへ投稿したり、待ち合わせの連絡を取り合う人もいます。逗子市の人口は約5万5,000人。その倍近くの人々が、花火が打ち上げられる19時20分に向けて集まるため、データ利用量が短時間に集中し、通信が混み合うことが予想されます。
そのような状況でも安定した通信環境を届けるために、KDDIグループのエンジニアたちはどのような準備をしてきたのか。花火大会の舞台裏に迫ります。
本番2日前から車載型基地局を設営
打ち上げ2日前の5月19日、逗子海岸に面した国道134号線沿いのある駐車場に1台の車載型基地局が到着しました。車載型基地局とは、通信設備を搭載した車両で、一時的に通信容量を増強するための移動式の基地局です。
.jpg?width=840&quality=100)
この駐車場は、全長約850mの逗子海岸の中間地点付近にあり、ここから東西に広がる海岸に向けて電波を発射します。
現地で対策の準備を進めるのは、KDDIエンジニアリングの田村 知之と小瀧 剛志です。
「今年のこの時期は、関東圏に大規模なイベントが集中しています。通常は、その地域を管轄する支社内で人員を配置して対応しますが、対策が不十分とならないよう、他の支社とも連携し、必要に応じて応援を受けながら各現場を支えています」(田村)
.jpg?width=840&quality=100)
実際の設営作業は、このような手順で進められます。
①対策のために最適とされる予め決めた設置場所に、車載型基地局の車両を駐車し設置する。
.jpg?width=840&quality=100)
②電柱から延伸した光回線のケーブルを、車載型基地局の中へ引き込む。車体側部にある細いケーブルが光回線である。
.jpg?width=840&quality=100)
③車載型基地局に搭載されている機器の設定を確認し、車載型基地局をKDDIの通信ネットワークに接続する。
.jpg?width=840&quality=100)
④車体上部に収納されているアンテナを設営する。アンテナを電波発射させる方向に角度を調整し、アンテナが搭載されたポールを伸長していく。
.jpg?width=840&quality=100)
.jpg?width=840&quality=100)
⑤最後に、車載型基地局の電波発射を行う。専用の測定機器を使って、対策エリアの通信状況も確認する。
今回、応援のために名古屋から設営に加わった小瀧は言います。
.jpg?width=840&quality=100)
「イベント会場ごとに環境は違いますが、やるべきことは変わりません。限られた期間で最大限の効果を出せるよう準備するのが私たちの仕事です」(小瀧)
では、逗子海岸花火大会にはどのような「特徴的な環境」があったのでしょうか。
より多くの人に電波を届ける新機材「DB-MMU」投入
今年、KDDIの逗子海岸花火大会への電波対策には明確な課題が二つあった、と田村はいいます。一つは、海岸西側エリアの通信品質向上。
「東側はビーチに有料席が設けられているため、来場されるお客さまの数をある程度予測できます。一方で西側は自由席になっているため、お客さまの数や人の流れが読みづらい部分があります」(田村)
その対策として導入されたのが、最新の5G無線装置「DB-MMU(Dual Band Massive MIMO Unit)」でした。
.jpg?width=840&quality=100)
.jpg?width=840&quality=100)
「DB-MMU」とはどのような仕組みなのか、田村が解説します。
「DB-MMUは、基地局から出す電波を効率よく分配する装置です。従来は、一方向に広く電波を届ける仕組みが中心でしたが、人が特定の場所に集中したり移動したりすると、通信品質にばらつきが生じることがありました。DB-MMUは、電波を複数の方向に送り分けることで、より多くの方に電波を届けやすくします。それにより、来場者が多く移動も生じるイベント会場でも通信が安定しやすくなり、効果を発揮するんです」(田村)
そしてもう一つ、JR逗子駅から会場の海岸までの行き帰りの動線になっているルートについても、電波の強化を行いました。こちらは車載型基地局によるものだけではなく、既設の基地局も活用して、通信を分散させることで対策を行いました。
.jpg?width=840&quality=100)
これらの対策は、昨年の花火大会終了直後に通信状況を分析し、改善点として導き出されたものです。
「イベントが終わったら対策も終わりではなくて、その翌日から来年に向けた検討が始まっています。どこに人が集まり、どこで通信が集中したのかを分析して、次の対策につなげます」(田村)
こうした振り返りの積み重ねが、毎年の通信品質向上につながっています。
あらゆる状況を想定し、もしもに備える
車載型基地局の設営後も、エンジニアたちの仕事は続きます。電波発射後には、電波の届き具合を確認し、前日には海岸の端から端までを歩いて詳細な測定を実施。当日もポイントごとに通信状況を確認しながら本番を迎えました。こうした積み重ねによって、想定した対策が実際の会場で機能するかを検証していきます。
.jpg?width=840&quality=100)
.jpg?width=840&quality=100)
「実際に歩いて調査しないと、電波が想定通りに届いているか、電波が弱い場所がないか、人が集まりそうな場所で十分な品質を確保できそうか、といったことは分からないんです。地味に見えますが、とても重要な作業です」(田村)
当日はあいにくの雨で、開催の判断は14時頃までずれ込みました。それでもエンジニアたちのやるべきことは変わりません。当日の人出に合わせて電波品質を確認しながら、本番に向けた最終チェックを続けていました。
開催が決まると、夕方の逗子海岸には続々と人が集まり始めます。
.jpg?width=840&quality=100)
友人同士で記念写真を撮る人。会場の様子をSNSで共有する人。待ち合わせの連絡を取る人。その用途はさまざまですが、多くの人がスマートフォンを片手に、打ち上げの時を待っていました。
.jpg?width=840&quality=100)
そして打ち上げが始まると、一斉にスマートフォンが夜空に掲げられます。写真や動画を撮影し、感動と興奮を家族や友人に届けてゆく──その裏側でも、エンジニアたちは通信状況を見守り続けていました。
.jpg?width=840&quality=100)
.jpg?width=840&quality=100)
エンジニアたちがつないだ“その先”にあるものとは
最後に、花火大会に電波を届けることに対する、エンジニアたちの思いを尋ねてみました。
田村は、通信の先にいる人々の存在を挙げます。
「地域の方々がイベントを成功させるため、尽力されている様子をよく伺います。その中で、私たちは通信という一部分を担っているだけかもしれませんが、その成功の一助になれたらうれしいですね」(田村)
小瀧は、お客さまの期待に応える責任を語ります。
「お客さまはスマートフォンが使えることを前提に会場へ来られています。その“あたり前”を支えることが私たちの役目です。さまざまな制限がある中で、最大の効果が確認できたときは達成感があります」(小瀧)
夜空に咲く花火は、多くの人の記憶に残ります。その感動を誰かと共有できることもまた、現代の花火大会の大切な価値の一つです。KDDIグループはこれからも、通信だけではなく、その先にある人々の特別な時間や思い出もつないでいくことで、人々の熱狂や感動を支え続けていきます。