誰一人取り残さないスマホ社会へ。「スマホ操作サポートシール」から広がる取り組みの輪

スマートフォンには音声読み上げなど視覚に障がいのある方へ向けたアクセシビリティ機能が備わっており、多くの方がそれらを活用しています。一方で、使い始めの時期や、操作に慣れるまでの過程で戸惑いや難しさを感じるという声も少なくありません。
また、物理的なボタンを備えたフィーチャーフォンからフラットなタッチパネルへと進化したことは、視覚障がい者の方々にとって「どこを触っているかわからない」という大きな課題を生み出しました。スマホが暮らしの当たり前になったいま、この変化は、単なる不便さを超えて、社会や人とのつながりに影響が及ぶ場面もあります。
「もっと安心してスマホを使いたい」「スマホを通じて大切な人や世界とつながりたい」、そんな当事者の思いから生まれたのが、KDDIが提供している「スマホ操作サポートシール」です。当事者や支援の現場の声に耳を傾けながら形にしてきた取り組みには、どのような背景や挑戦があったのか、担当者に聞きました。
「スマホをもっと使いこなしたい」という当事者の声がきっかけに
「スマホをもっと使いこなしたい」「より自分に合った使い方を見つけたい」。そんな、前へ進もうとする一人ひとりの思いや直面している壁に対して、通信事業者としてどう寄り添い、サポートできるか。「スマホ操作サポートシール」のプロジェクトは、現場で耳にしたある声から動き出しました。
視覚障がい者支援センターを訪れた際、「凹凸のない画面では、どう触っていいかわからない」という切実な悩みを耳にしたプロダクト企画部の江藤 麻樹は、当時の思いを次のように振り返ります。
「スマートフォンの企画開発を担う私たちであれば、この悩みをなんとか解決できるのではないか。そう考えたのがはじまりでした。それからヒアリングを重ね、スマートフォンの文字入力画面の上にシールを貼って工夫している方がいることを知りましたが、やはり剥がれやすさや反応の悪さに苦慮していました。そこから、より使いやすいシールを開発しようというアイデアにつながりました」(江藤)
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開発において何よりも優先したのは、「当事者の使いやすさ」でした。KDDIの特例子会社で、障がいのある社員が多様な業務を通じて活躍しているKDDIチャレンジドで働く社員や、視覚障がい者を支援する公共施設に協力を仰ぎ、現場の生の声を取り入れながら試行錯誤を重ねていきました。
「大切にしたのは、一人ひとりの異なる歩みに寄り添い、選択肢を増やすことでした。人によって見えづらさの程度や過程はさまざまで、ほとんど見えない方もいれば、視力が弱くなったロービジョンと呼ばれる状態の方、スマートフォンは使えていたが病気になり見えづらくなった方もいます。さまざまな状況に共通して役立つ形を探して、試行錯誤を重ねました」(江藤)
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「提供開始までは、正直なところどれほど必要とされるか不安もありました」と語るのは、当時、江藤と同じくプロダクト企画部でシールの開発にたずさわり、現在はサービス企画部に所属する小林 幹夫。お客さまへの浸透は、2025年5月の提供開始直後から口コミで少しずつ広がったといいます。
「地域の視覚障がい者支援センターのSNSなどでご紹介いただき、まとまった枚数の要望が届くなど、好意的に受け止めていただけました。現在は全国7か所の店舗での配布に加え、auとUQ mobileのお客さまにはKDDIお客さまセンターからの配送も無償で行っています」(小林)
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現場社員に広がる「誰一人取り残さない」という使命感
KDDIでは2022年より、「視覚障がい者のためのスマホ教室」を実施しています。担当しているのは、首都圏総支社 南関東管理部の佐嶋 稔。単なる操作説明の場を超えて、「スマホは自分には使えない」と諦めていた参加者が、家族や友人とつながる喜びを取り戻し、自分の可能性を再発見するきっかけとなっています。
自ら講師として視覚障がい者や支援者と関わってきた佐嶋は、視覚障がい者にとってのスマホの重要性についてこう語ります。
「物理ボタンのないスマホは、『視覚障がい者には使えないだろう』と諦めてしまう当事者やご家族も多いんです。音声読み上げ機能など、画面を見ずにスマホが使えることを知る機会もまだまだ少ないのが現状です。
しかし、日常生活をより便利に・楽しくという側面はもちろん、特に災害時に自分がどこにいるか、安否を伝えたり、助けを求めたりするうえで、スマホは非常に重要なツールです」(佐嶋)
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「人は情報の8割を視覚から得ている」といわれるなか、視覚に障がいのある方々は、災害時に情報をすばやく取得したり、一人で避難したりすることが困難な「災害弱者」になりやすい現状があります。
最もスマホを必要とするはずの人々に、活用するための情報が届いていない――当事者が置かれた状況を知るにつけ、「一人でも多くの方に、安全で便利なスマホの世界を届けたい」との思いが強くなっていった、と佐嶋は言います。
「一人ひとりのお客さまと向き合い、共に課題を解決したい」。それぞれ別の場所で、しかし共通の思いからはじまったスマホ教室と、スマホ操作サポートシールの開発。シールを教室で活用し、そこで得られたフィードバックをシールの改良に活かし――ソフトとハード、まさに車の両輪のように動きながら、当事者と向き合い続けています。
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当初は首都圏ではじまったスマホ教室も、「目の前で困っている人のために、自分たちができることを」という思いに共感した各地の総支社から声があがり、取り組みが広がっています。
「関わる社員のあいだでは、『誰一人取り残さない』という使命感が自然と共有されているのではないでしょうか。スマホ教室を通じて、スマホ操作サポートシールが地域の枠を超え役立っていることは、私たちにとっても大きな励みになっています」(江藤)
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小さな「できた」が自信に変わる。挑戦する人と共に歩む未来
実際にシールを活用しているKDDIチャレンジドの横井は、操作がスムーズになったことで、心のゆとりが生まれたといいます。
「以前は入力ミスが多く、急いで連絡を取りたいときなどは大きなストレスになっていました。いまはシールを手がかりにできるので迷いが減り、長文でのコミュニケーションも前向きに楽しめるようになりました」(横井)
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横井をはじめとするKDDIチャレンジド社員や当事者の声を取り入れ、2026年6月には、スマホ操作サポートシールのリニューアル版の配布を開始しました。主な改良ポイントは、「粘着力」「厚み」「形状」の3点。開発のこだわりについて、小林はこう話します。
「粘着力については、操作に慣れてきたら剥がしたいという声もあるため加減が難しいのですが、旧版は使用中に剥がれてしまうという声があったため改良しました。厚みについても、触れたときのわかりやすさと引っかかりのない操作性の両立を追求し、旧版よりわずかに薄くしています。形状については、スマホのサイズや好みに応じてより柔軟に便利に活用できるよう、シールの形状や大きさをブラッシュアップしました」(小林)
スマホ操作サポートシールは、ユーザーが「自分だけの最適な操作感」を見つけていくステップを支えるツールです。日々の小さな「できた」という実感が、デジタル社会を自由に歩む自信へとつながっていくよう、シールはその「確かな手がかり」として伴走します。
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佐嶋が牽引するスマホ教室は地道に活動を続け、これまでに延べ700名以上が参加。現在はさらにその先を見据え、家族や支援者など「教える側」を育成する講習会や解説動画の制作にも力を注いでいます。社会全体で支え合う輪を広げるための、新たな挑戦です。江藤たち、スマホ操作サポートシールの開発陣も、これからもユーザーの声に耳を傾け、改良を続けていくと意気込みます。
「やってみたい」「つながりたい」と一歩を踏み出す一人ひとりの挑戦がある限り、KDDIはこれからも、その歩みのすぐそばで伴走し続けます。
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