「Spark Your Journey」KDDIが新ブランドメッセージに込めた思い

2026年5月12日、KDDIは新たなブランドメッセージ「Spark Your Journey(スパーク ユア ジャーニー)」を発表しました。このメッセージは、KDDIがお客さまと社会に示す「約束」です。

なぜ今、この言葉だったのか。
どのようなプロセスを経て、このブランドメッセージは生まれたのか。

KDDIの松田社長とブランド責任者の合澤、そしてクリエーティブ・ディレクター 磯島氏による座談会を実施しました。本記事では、「Spark Your Journey」という言葉がどのように生まれ、どのような思いが込められているのかを、3人の言葉で紐解きます。

インタビュイー:
KDDI 代表取締役社長 CEO 松田 浩路
KDDI ブランド・コミュニケーション本部長 合澤 智子
電通 zero クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 磯島 拓矢氏

25年の節目とAI前提社会という転換点

――ブランドメッセージ刷新は、どのようなきっかけから始まったのでしょうか?

松田 KDDI発足から25周年という節目を迎え、これまでの歩みを改めて振り返ると、そこには先人の皆さんの努力と挑戦の積み重ねがあります。その歴史をしっかりと次世代へ継承していかなければなりません。

一方で、企業として、時代に応じて変革していくことも必要です。では、今の時代における変革とは何か。私は、「AI前提社会」への転換だと捉えています。これからの社会は、AIによる効率化や高度化が進み、事業成長や新たな付加価値の創出が広がっていく一方で、AIを当たり前として、それ以外の価値でどのように差別化していくのか向き合う必要があります。そのAI前提社会の中で、KDDIとしてどのような価値を提供することに挑戦していくのか。私たちのコアの価値である「つなぐチカラ」を、どのように進化させていくのか。

そうしたことを考える中で、ブランドこそがAIに壊されにくい差別化価値になると考え、もう一度立ち返って考えたいと思ったのが、今回のブランドメッセージ刷新に向けた議論の出発点です。

KDDI 代表取締役社長 CEO 松田 浩路
KDDI 代表取締役社長 CEO 松田 浩路

合澤 コロナ禍を経て、私たち一人ひとりの価値観は大きく変化したことを感じています。また、AIをはじめとしたテクノロジーや社会の変化のスピードは、以前とは比べものにならないほど加速しています。衛星とスマホの直接通信サービスの開始やAIデータセンターの開所、そして高輪への本社移転など、KDDI自身の環境も変化していく中で、「今の時代において、KDDIのブランドはどうあるべきか」を、考え直す必要がある。そういった意識が、現場でも生まれていました。

――ブランドを見つめ直すにあたり、どのようなプロセスを踏まれたのでしょうか?

合澤 ブランドを考える上で大切なのは、社員の声を起点にすることです。そのため、KDDIの価値やこれからのあり方について語り合うワークショップを開催しました。KDDIは事業領域も広く、ステークホルダーも多様です。特定の視点に偏らないよう、立場や世代、部門を越えて、幅広いバックグラウンドの社員で議論しました。

松田 ブランドというのは、社員一人ひとりの日々の行動や判断の積み重ねによって形づくられていくものです。だからこそ、KDDIがどうあるべきか、どこに向かうのかを、社員自身が自分事として腹落ちしていることが重要です。ちょうどその頃、社員から、「新しい体制に向けて、ワークショップをやってみたい」という声がありました。そこで、まずは現場の声にきちんと耳を傾け、どのような価値観や思いが息づいているのかを知るところから始めようと考えました。

合澤 実際のワークショップでは、「世界一のつなぐの先に価値をつくりたい」「日本を元気にしたい」といった、熱量の高い言葉が社員から次々と出てきました。中でも印象的だったのが、若手社員からの声です。「通信を通じて、誰かの挑戦を支えたい」「一人ひとりの人生に寄り添える仕事がしたい」といった言葉が語られ、これからのKDDIを担っていく世代が、明確な意思と希望を持っていることに深く胸を打たれました。

ワークショップでは、立場や世代の異なる社員が集い、それぞれの視点でKDDIの提供価値について、話し合いを重ねた
ワークショップでは、立場や世代の異なる社員が集い、それぞれの視点でKDDIの提供価値について、話し合いを重ねた

社員の言葉を起点に考え抜かれた言葉の意味

――ワークショップで集まった社員の声を受けて、どのようなステップでブランドメッセージ策定へと進んでいったのでしょうか?

合澤 ワークショップで集まった社員の声をもとに、これからのKDDIの提供価値を見つめ直すことを再確認し、そこから具体的な検討がはじまりました。

松田 ブランドメッセージの言葉を紡ぎ出していくプロセスでは、毎回新しい発見がありました。2000年に掲げた「Designing the Future」で未来を切り開きデザインすることを示し、2019年から掲げた「Tomorrow, Together」では、明日の未来を共に描いてきました。こうした企業文化を継承しながら、ワークショップで浮かび上がってきた社員の声を、これからのKDDIの言葉としてどうつなげて進化感を出していくのか、対話を重ねていきました。

磯島氏 まずは、社員の皆さんの声を俯瞰し、そこから“KDDIらしさ”の軸が何かを探っていきました。印象的だったのは、社員の皆さんのパブリックな意識が非常に強いことです。大企業に勤めながらも、「誰一人取り残さないサービス」といった、一人ひとりに寄り添う言葉が自然に出てきていました。これは、他の企業にはなかなかない個性だと感じました。

そして、初期の段階で見えてきたのが、大きく三つの方向性です。
一つ目が「Equity(エクイティ)」。KDDIは生活や社会に欠かせないインフラを担ってきた会社であり、「みんなのために」という公共性への関心を非常に高く持っています。二つ目が「Personal(パーソナル)」。KDDIは、誰一人も取り残さないサービスを展開し、一人ひとりの人生に寄り添いたい、という視点を持っています。そして三つ目が、「Vitality(バイタリティ)」。社会を前に進めたい、日本を元気にしたい、誰かの挑戦を応援したいという思いがあります。

まず大きくその三つの話からさせていただきました。そして、KDDIが社会に提供する価値として何がふさわしいかを議論しながら、徐々に絞り込んでいきました。

松田 磯島さんの分析を聞いて、非常に腑に落ちました。私たちが感じていたKDDIの“らしさ”と、これから進むべき方向性が、言語化された感覚でした。

磯島氏 議論の中で、松田社長から「EquityはすでにKDDIの中にある大前提なので、あえて前に出しすぎなくてもよいのではないか」という考えが共有されました。そこで、「Equity」という土台の上に、「Personal」と「Vitality」の二つの方向性をいかに束ねていくか――その考え方を軸に、ブランドメッセージの検討を進めていきました。

――二つの方向性をまとめる言葉として、「Spark Your Journey」にたどり着くまでにはどのようなストーリーがあったのでしょうか?

松田 早い段階から、軸として定めたのが「Journey」という言葉でした。この言葉には、二つの意味が込められています。一つは、人生や仕事が時間をかけて進んでいく時間軸としての旅路。もう一つは、人それぞれ異なる場所や立場で生きているという地理的な広がりとしての旅路です。

磯島氏 この言葉の背景には、KDDIがこれまで掲げてきたブランドメッセージとの連続性があります。過去のブランドメッセージは、「Future」「Tomorrow」と、いずれも時間軸に関する言葉を含んでいます。その流れを踏まえつつ、「Personal」な時間軸、つまりは「人生」に寄り添う言葉を考えた時に、「Journey」が浮かび上がってきました。未来は一つではなく、一人ひとり異なるもの。そうした一人ひとりの未来を表現する言葉として「Journey」を採用しました。

松田 そして、「Your」という言葉を加えたことで、「Personal」の考え方をより明確に伝えています。一人ひとりに異なる人生があり、それぞれに時間の流れがある。その一つひとつに向き合っていく。そういう意味で、「Your」はこのメッセージの中で重要な役割を持っています。

磯島氏 そうですね。「Your」によって、メッセージの輪郭をより明確にしています。KDDIはこれまで、世界中に暮らすすべての人に向けて、いわば「for All」の立場で価値を提供してきました。誰もが電話を使えるようにする。インターネットを社会に広げる。モバイルを誰もが手にできるようにする。そうした時代を経て、これからKDDIはより本格的に一人ひとりのユーザーに寄り添っていくフェーズに入ります。社員一人ひとりが、目の前の一人、その人自身の「Journey」を思い浮かべながら仕事をする――その姿勢を、この「Your」に込めました。

電通 zero クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 磯島 拓矢 氏
電通 zero クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 磯島 拓矢 氏

合澤 「Your」という言葉には、「誰のJourneyなのか」を明確にする意図があります。そして、旅の主語を一人ひとりに置くことで、KDDIとしてその一人ひとりと向き合っていく姿勢を示しています。

私たちは企業として「人間らしさ」を大事にしたいと考えています。AIをはじめとした技術が、これからますます進化していくことは、間違いありません。だからこそ、その技術を、人の温もりや、人間らしさのためにどのように使っていくのかが、企業として問われていくと考えています。これからもKDDIは、お客さま一人ひとりにしっかりと目を向ける、よりヒューマンセントリックな企業でありたい。その姿勢を、「Your Journey」に込めたいと考えました。

――では、「Spark」にはどのような思いが込められているのでしょうか?

松田 「Spark」は最後まで時間をかけて選び抜いた表現です。大きな成功や劇的な変化だけでなく、何かが始まる“きっかけ”を示す言葉として、心の中に生まれた、まだ言葉にならない小さな火花という意味も含めています。

私は社長に就任してから、KDDIが「夢中に挑戦できる会社」であることを大事にしてきました。人は何かに夢中になると、気持ちが高揚する。その入口にあるときめきや心の動きが、その人自身の人生を動かすものだと思っています。

「Spark」という言葉には、そうした“ときめき”や“火を灯す”という意味を込めています。仕事であっても、プライベートであっても、人が内側から動き出す、その瞬間を大切にしていきたいと考えています。

磯島氏 実は、最初は「Start Your Journey」という案も候補でした。「Start」は、「始める」「一歩を踏み出す」という意味ではとても分かりやすく、「Journey」との相性も決して悪くありません。

松田 これまでだったら、「Start」を選んでいたかもしれません。でも今回は、後から振り返ったときに、ここがターニングポイントだった、と思えるものにしたい、と心に決めていましたので、より“引っかかり”のある「Spark」がふさわしいと考えました。

というのも、「夢中」になるための“熱”のあり方は、人それぞれだと思うんです。自分から動き出す“自燃性”を持つ人もいれば、誰かの影響を受けて動き出す“他燃性”の人もいます。だからこそ、「Spark」という言葉は、自ら強く燃え上がることだけでなく、心の奥にある小さなときめきや、ふとしたきっかけで生まれる火を灯すような瞬間も含んでいます。

「自分はそこまで何かを起こせるタイプではない」と感じる人であっても、その人の中にある小さな変化や気持ちの動きを応援したい。その一つひとつに寄り添っていきたいと考えています。

合澤 「Spark Your Journey」には、意味を一つに固定しすぎていないところにも魅力があります。「Spark」の大きさも、「Your Journey」の捉え方も、人それぞれでいい。その余白があるからこそ、社員自身が自分の仕事に引き寄せて考えられますし、お客さまや社会にとっても、自分ごととして受け取ってもらえるのではと思っています。

「Spark Your Journey」が示すこれまでとこれから

――受け取る人にとって、この「Spark Your Journey」がどんな言葉であってほしいと考えていますか?

合澤 これまで私たちは、「つなぐ」という価値を、社内外に向けて伝えてきました。ただ、今回のブランドメッセージでは、その先まで感じてもらえたらうれしいです。つないだ先で、その人の気持ちや挑戦に火が灯る。KDDIが“つなぐ”ことを体現することで、一人ひとりの人生を少しでも前に進める存在であることを感じていただけると幸いです。

私たちの通信やテクノロジーの先にあるのは人の暮らしや人生です。「Spark Your Journey」を通して、KDDIがそうした部分に本気で向き合っている会社であること、行動まで含めて一人ひとりに寄り添う姿勢を感じてもらえたらと思っています。

KDDI ブランド・コミュニケーション本部長 合澤 智子
KDDI ブランド・コミュニケーション本部長 合澤 智子

磯島氏 企業のブランドメッセージには、大きく二つの役割があります。一つは、「私たちはこういう会社です」と定義するための言葉。もう一つは、「私たちはこれからどこへ向かうのか」という方向性を示す言葉です。

KDDIに「つなぐ」という定義は、すでにしっかりと根づいている。だからこそ今回のメッセージは、受け取った人それぞれが、自分なりの意味を広げていける言葉であってほしいと考えました。「Spark Your Journey」をきっかけに、「自分にとってのJourneyって何だろう」「いま、自分の中にあるSparkはどんなものだろう」と、少し立ち止まって考えてもらえる。そんなふうに、時間をかけて咀嚼され、育っていく言葉になっていけばいいなと思っています。

松田 今回のプロセスの中で一番印象に残っているのは、最終的に「Spark Your Journey」でいこうと決めた瞬間です。たった3単語にすぎませんが、お客さまや社員を思い浮かべながら一つひとつの言葉に重ね合わせ、このメッセージを紡いでいくプロセスは、非常に新鮮で充実した時間でした。

だからこそ、この言葉に込めた意味や思いを、きちんと伝えていく責任があると感じています。単にメッセージとして掲げるだけでなく、日々の取り組みや行動を通じて体現し、「KDDIはこういう価値を届けている会社なんだ」と感じていただける状態をつくっていきたいと考えています。

――最後に、「Spark Your Journey」を旗印にしてKDDIが目指す未来像を教えてください。

松田 「Spark Your Journey」によってお客さまにしっかりと寄り添う姿勢を掲げ、実践していくことで、お客さまから応援していただける会社を目指していきたい、と強く思っています。

ブランドステートメントには、「KDDIのすべてのテクノロジーと品質は、人を輝かせるために存在します。」というフレーズがあります。ワークショップを通じて、社員一人ひとりの中にも、技術や品質に対する自信とプライドが深く根付いていることを改めて実感しました。

この土台をしっかりと固めながら、次なる飛躍につなげることが私たちの使命だと考えています。それには社員一人ひとりが新しいことに挑戦していく姿勢が欠かせません。

「Spark Your Journey」という言葉には、そうした社員一人ひとりの挑戦や成長を後押ししていきたいという思いも込めています。

こうして夢中に挑戦することの積み重ねが、最終的にはお客さまへの価値提供につながっていきます。「Your Journey」という言葉に込めた通り、私たちは画一的な価値提供ではなく、一人ひとりのお客さま、そして各地域ごとに寄り添っていく必要があります。そうした地理的な広がりに加え、それぞれの人生に寄り添う時間的な広がりの両方に向き合いながら、KDDIとしてのあり方をより立体的に示していきたいと考えています。

私たちは次の10年・20年、さらにはその先の未来を見据えて事業を考えていく必要があります。15年前にスマートフォンが普及期だったことを考えると、この先の未来でもあっという間に新しいテクノロジーが生まれていくでしょう。

それに加えてAIが当たり前になる時代。その中でAIに代替されにくい価値として、ブランドを大切にしていく。今回新たに定めた「Spark Your Journey」を起点に、KDDIらしいポジションをしっかりと築いていきたいと考えています。

 

新ブランドメッセージの世界観を表現した動画はこちら

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